食品添加物とは
食品添加物とは・・・
■食品添加物とは
「食品添加物」という言葉は、第二次世界大戦の後使われるようになりました。
<食品添加物の定義>
食品衛生法第4条第2項では、「添加物とは、食品の製造の過程において又は加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用するものをいう。」と定義しています。
<食品添加物の役割>
食品の製造や加工のために必要な製造用剤
食品の風味や外観を良くするための甘味料、着色料、香料など
食品の保存性を良くする保存料、酸化防止剤など
食品の栄養成分を強化する栄養強化剤
平成17年8月19日現在、指定されている添加物は356品目、既存添加物名簿に収載されているもの450品目、天然香料612品目となっています。
食品添加物は化学的合成品、天然添加物にかかわらず、厚生労働大臣が指定したものだけを使うことができます。
ただし、 天然添加物として使用実績があると認められるものとして平成8年に示された「既存添加物名簿」に収載されているもの、 天然香料及び一般に食品として供されるものであって添加物として使用されるもの(これを、「一般飲食物添加物」といいます。)については指定から除外され、使用されています。
食品衛生法第10条
「人の健康を損なうおそれのない場合として厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて定める場合を除いては、添加物並びにこれを含む製剤及び食品は、これを販売し、又は販売の用に供するために、製造し、輸入し、加工し、使用し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。」
■食品添加物の分類
食品添加物は様々な目的で使用され、その役割や効果の違いによって分類されます。
☆ 食品衛生法上の分類
<指定添加物>
食品添加物は、化学的合成品や天然添加物など製造方法の違いに係わらず食品衛生法第10条に基づき、厚生労働大臣が安全性と有効性を確認して指定した添加物でなければ、使用することができません。
平成17年8月19日現在、356品目が指定されており、食品衛生法施行規則別表第1に収載されています。
→厚生労働省法令等データベースシステム
<既存添加物>
長年使用されていた実績があるものとして厚生労働大臣が認めたものを「既存添加物名簿」に収載し、引き続き使用することを認めています。
既存添加物名簿には450品目が収載され、品名や基原、製法、本質などは、「既存添加物名簿収載品目リスト」に収載されています。
安全に問題のあるもの、使用実態のないものについては、名簿から消除されることがあります。
<天然香料>
りんごや緑茶、乳などの動植物から得られる着香を目的とした添加物で、一般に使用量が微量であり、長年の食経験で健康被害がないとして使用が認められているものです。
「天然香料基原物質リスト」に612品目の基原物質が収載されています。
<一般飲食物添加物>
食品衛生法第10条では、「一般に食品として飲食に供されているもので添加物として使用されるもの」と定義されています。
例 オレンジ果汁を着色の目的で使用する場合
こんにゃくの成分であるマンナンを増粘の目的で使用する場合
「一般飲食物添加物品目リスト」に72品目が収載されていますが、すべての食品が対象となります。
☆ 使用目的別分類
添加物をその役割や効果の違いによって分類したものです。
<食品の製造や加工のために必要なもの>
特定の食品の製造や加工の際になくてはならないもので、酵素、ろ過助剤、油脂溶出剤、消泡剤や酸・アルカリなどの加工助剤などが含まれます。
例 豆腐を固める凝固剤
小麦粉からラーメンを作る時に加えるかんすい
ビールなどのろ過の際に使用する活性炭
<食品の風味や外観を良くするためのもの>
食品の味や見た目を良くし、魅力的で品質の良い食品を作るために加えるもの。
食品の色合いを良くする着色料・発色剤・漂白剤など、香りを付ける香料、味を良くする甘味料・調味料など、食感を良くする乳化剤・増粘安定剤などがあります。
<食品の保存性を良くし食中毒を防止するもの>
食品の酸化・変敗、微生物の繁殖による腐敗などを防止して、食品の保存性を高めるためのもの。
保存料や酸化防止剤の他に、殺菌料、防かび剤などがあります。
<食品の栄養成分を強化するもの>
食品に本来含まれる栄養成分や人に必要な栄養素を、補充・強化する目的で加えるもの。
ビタミン、ミネラル、アミノ酸などがあります。
■食品添加物の使用基準と成分規格
食品衛生法第11条第1項に基づき、食品添加物にはその成分規格や使用基準が定められています(「食品、添加物等の規格基準(厚生省告示第370号)」)。
☆ 成分規格
添加物そのものに有害な不純物が含まれていると、健康危害を引き起こす原因となる危険性があります。そこで、食品添加物の指定の際には、個別に成分規格が定められています。
成分規格には、添加物の純度のほか、製造する際に生じる副産物や有害なヒ素及び重金属の含有量の上限値などがあり、この成分規格に合わない添加物を使用したり、販売したりすることはできません。
成分規格は、指定添加物だけでなく、既存添加物についても必要に応じて定められています。
平成17年8月19日現在、335品目の指定添加物、72品目及び3製剤の既存添加物に成分規格が設定されています。
この他に、業界団体の日本食品添加物協会では、約150品目の天然添加物について自主規格を定めています。
☆ 使用基準
指定された食品添加物は、安全性試験や有効性評価の結果に基づいて、必要に応じて使用基準が定められています。
使用基準を定める場合は、まず、動物実験などを基にして、人が一生涯にわたって毎日摂取しても全く影響がない量(一日摂取許容量(ADI:Acceptable Daily Intake))を求めます。
このADIに安全係数をかけ、日本人の各食品の摂取量などを考慮した上で、使用対象食品や最大使用量などが決められます。
従って、使用基準の上限量を添付したとしても、ADIを十分下回る量しか摂取しないようになっているのです。
実際に使用される添加物の量は基準値より少ない場合が多く、その食品を食べ続けたとしても、安全性には問題はありません。
<森永砒素ミルク事件>
1955年、森永乳業徳島工場が製造した粉ミルクに使用されたpH安定剤が、不純物として砒素を含んでいたために、乳児に発熱・おう吐・下痢・皮膚の色素沈着などの健康障害が発生しました。このとき使用されたpH安定剤は、産業廃棄物から再生した第2リン酸ソーダで、安全性の確認されたものではありませんでした。この事件は、最終的に死者138名、被害者1万人を超える食品衛生史に残る大事件となり、この事件を契機に、食品添加物行政の大改革が行われました。
食品添加物の安全性試験
食品添加物の指定の際には、ラットやイヌなどの実験動物や微生物、培養細胞などを用いた安全性評価のための様々な試験を行い、データを提出しなければなりません。
☆ 28日間反復投与毒性試験
実験動物に28日間繰り返し与えて生じる毒性を調べます。
☆ 90日間反復投与毒性試験
実験動物に90日間繰り返し与えて生じる毒性を調べます。
☆ 1年間反復投与毒性試験
実験動物に1年以上の長期間にわたって与えて生じる毒性を調べます。
☆ 繁殖試験
実験動物に二世代にわたって与え、生殖機能や新生児の成育に及ぼす影響を調べます。
☆ 催奇形性試験
実験動物の妊娠中の母体に与え、胎児の発生・発育に及ぼす影響を調べます。
☆ 発がん性試験
実験動物にほぼ一生涯にわたって与え、発がん性の有無を調べます。
☆ 抗原性試験
実験動物でアレルギーの有無を調べます。
☆ 変異原性試験
細胞の遺伝子や染色体への影響を調べます。
☆ 一般薬理試験
薬理作用の試験では、例えば、中枢神経系や自律神経系に及ぼす影響や、消化酵素の活性を阻害し実験動物の成長を妨げる性質の有無などを調べます。
☆ 体内動態試験
体内での吸収・分布・代謝・排泄など、体内に入った物質が生体内でどうなるかを調べます。
日本人一人当たりの食品添加物の一日摂取量について
昭和55年から現在まで、厚生労働省が中心になり、自治体の衛生研究所などが協力し、日本人一人当たりの食品添加物の一日摂取量実態調査を継続して行っています。
その結果、サッカリン、ソルビン酸、食用タール色素などの天然には存在しない添加物の一日摂取量は約0.1gで、物質ではプロピレングリコール、ソルビン酸、プロピレングリコール脂肪酸エステルの順で多いという結果でした。
また、ビタミン、アミノ酸、ミネラルなどのような、天然の食品にも存在し添加物でもあるという物質の加工食品からの一日摂取量は約9.5gでした。その中で、添加物由来のものは約3.2gと推定されています。
ADI(体重50kgとして計算した一日摂取許容量)との比較では、天然に存在しない添加物のADI比は、すべて3%以下でした。発色剤として使用する硝酸についてはADI比が125%と高かったのですが、これは主として生鮮食品に含まれる天然由来のものでした。
添加物の一日摂取量とADI(一日摂取許容量)の比較
物質名(主要用途) 摂取量(mg) ADI(mg) ADIに対する
摂取量の割合(%)
Total 加工食品 生鮮食品
プロピレングリコール(品質保持剤) 37.30 1250 2.98
ソルビン酸(保存料) 27.50 1250 2.20
プロピレングリコール脂肪酸エステル(乳化剤) 14.49 1250 1.16
サッカリンナトリウム(甘味料) 0.42 250 0.16
アスパルテーム(甘味料) 2.20 2000 0.11
亜硝酸(発色剤) 1.15 1.08 0.07 3 38.3
硝酸(発色剤) 232.00 39.60 192.00 185 125.0
■用途別 主な食品添加物
添加物は、その物質の特性から、用途が限られるものと複数の用途で使用されるものがあります。
ここでは、用途別に、よく使われる添加物を紹介します。
1 甘味料
2 着色料
3 保存料
4 増粘剤、安定剤、ゲル化剤又は糊料
5 酸化防止剤
6 発色剤
7 漂白剤
8 防かび剤又は防ばい剤
9 乳化剤
10 膨脹剤
11 調味料
12 酸味料
13 苦味料
14 光沢剤
15 ガムベース
16 栄養強化剤
17 製造用剤等
18 香料
■食品添加物の表示方法
容器包装に入れられた加工食品では、原則として、使用したすべての添加物名を、容器包装の見やすい場所に記載する必要があります(JAS法では、一括表示の原材料欄に、食品、食品添加物の順に記載することになっています。)。表示方法については、必要なことを、できるだけわかりやすく表示するために、様々な工夫がなされています。
また、栄養強化の目的で使用されるもの、加工助剤及びキャリーオーバーについては、表示が免除されています。
☆ 物質名で表示する
食品添加物は、原則として物質名を表示することになっています。
しかし、添加物の化学名では馴染みが無く、逆にわかりにくくなる場合もあります。例えば、ビタミンCの化学物質名は「L-アスコルビン酸」ですが、一般には、「ビタミンC」や「V.C」と書いた方がわかりやすいでしょう。
そこで、添加物の品名(名称及び別名)、簡略名及び類別名を定め、添加物を表示する場合は、これらの名前を使用することとしました。このリストは、食品衛生法施行規則「別表第1」、「既存添加物名簿」及び「食品衛生法に基づく添加物の表示等について(平成8年5月衛化第56号厚生省生活衛生局長通知)」に記載されています。
例) 化学物質名 L-アスコルビン酸
簡略名 アスコルビン酸、V.C
☆ 用途名を併記する
一部の添加物、保存料や甘味料など8種類の用途に使われるものは、消費者の選択に役立つ情報として、その用途名を併せて表示することになっています。この場合は、「保存料(ソルビン酸K)」、「甘味料(ステビア)」のように、用途名と物質名を表示しています。
用途名を併記する添加物(食品衛生法施行規則別表第5)
1 甘味料 甘味料、人口甘味料又は合成甘味料
2 着色料 着色料又は合成着色料
3 保存料 保存料又は合成保存料
4 増粘剤
安定剤
ゲル化剤又は糊料 主として増粘の目的で使用される場合にあっては増粘剤又は糊料
主として安定の目的で使用される場合にあっては安定剤又は糊料
主としてゲル化の目的で使用する場合にあってはゲル化剤又は糊料
5 酸化防止剤 酸化防止剤
6 発色剤 発色剤
7 漂白剤 漂白剤
8 防かび剤又は防ばい剤 防かび剤又は防ばい剤
※ 「既存添加物リスト」増粘安定剤の項に収載されている品目のうち多糖類を複数で使用する時は、「増粘多糖類」という類別名が使用できます。この増粘多糖類を「増粘剤」として使用する場合は、用途名の「増粘剤」を省略することができます。
☆ 一括名で表示できる
添加物表示は個々の物質名を表示するのが原則ですが、次の14種類の用途で使用する場合には、使用の目的を表す「一括名」で表示することが認められています。例えば、微量の物質を調合して作られる食品用香料は、配合した物質全てを表示するよりも、「香料」と表示した方がわかりやすくなります。
一括名で表示できる添加物(食品衛生法施行規則別表第8関係)
表示される一括名 添加物の例
イーストフード 塩化アンモニウム、塩化マグネシウム、グルコン酸カリウムほか
ガムベース エステルガム、グリセリン脂肪酸エステル、酢酸ビニル樹脂ほか
かんすい 炭酸カリウム(無水)、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムほか
苦味料 イソアルファー苦味酸、カフェイン(抽出物)、ホップ抽出物ほか
酵素 アガラーゼ、アクチニジン、アクロモペプチダーゼほか
光沢剤 オウリキュウリロウ、カルナウバロウ、カンデリラロウほか
香料又は合成香料 アセト酢酸エチル、アセトフェノンほか(及び天然香料)
酸味料 アジピン酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウムほか
軟化剤(チューインガム軟化剤) グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール
調味料(その構成成分に応じて種類別を表示)
調味料(アミノ酸)、調味料(アミノ酸等)
調味料(核酸)、調味料(核酸等)
調味料(有機酸)、調味料(有機酸等)
調味料(無機塩)、調味料(無機塩等)
アミノ酸:L-アスパラギン酸ナトリウム、DL-アラニンほか
核酸:5'-イノシン酸二ナトリウム、5'-ウリジル酸二ナトリウムほか
有機酸:クエン酸カルシウム、クエン酸三ナトリウムほか
無機塩:塩化カリウム、リン酸三カリウムほか
豆腐用凝固剤又は凝固剤 塩化カルシウム、塩化マグネシウム、グルコノデルタラクトンほか
乳化剤 グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルほか
pH調整剤 アジピン酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウムほか
膨脹剤、膨張剤、ベーキングパウダー、ふくらし粉 アジピン酸、L-アスコルビン酸、塩化アンモニウムほか
☆ 表示が免除される
栄養強化の目的で使用される添加物と、加工助剤、キャリーオーバーに該当する添加物は、表示が免除されています。
<栄養強化の目的で使用されるもの>
栄養強化の目的で使用されるビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類については、表示が免除されています※。
※ 同じ添加物でも、栄養強化の目的以外で使用する場合は、表示する必要があります。
例) L-アスコルビン酸を
栄養強化の目的で使用する場合 → 表示免除
酸化防止剤として使用する場合 → 「酸化防止剤(ビタミンC)」と表示
<加工助剤>
食品の加工の際に添加されるもので次の3つに該当する場合は、表示が免除されます。
1 食品の完成前に除去されるもの
例)油脂製造時の抽出溶剤であるヘキサン
2 最終的に食品に通常含まれる成分と同じになり、かつ、その成分量を増加させるものではないもの
例)ビールの原料水の水質を調整するための炭酸マグネシウム
3 最終的に食品中にごくわずかな量しか存在せず、その食品に影響を及ぼさないもの
例)豆腐の製造工程中、大豆汁の消泡の目的で添加するシリコーン樹脂
<キャリーオーバー>
原則として、食品の原材料に使用された添加物についても表示する必要があります。
ただし、食品の原材料の製造又は加工の過程で使用され、その食品の製造過程では使用されないもので、最終食品に効果を発揮することができる量より明らかに少ない場合は、表示が免除されます※。
※ 添加物を含む原材料が原型のまま存在する場合や、着色料、甘味料等のように、添加物の効果が視覚、味覚等の五感に感知できる場合は、キャリーオーバーにはなりません。
例) 1 保存料の安息香酸を含むしょうゆでせんべいの味付けをした場合、この安息香酸は含有量が少なく、せんべいには効果を持たない。
→ キャリーオーバーとなり、表示の必要はありません。
2 着色料を使ったメロンソースをメロンアイスに使用した場合、最終製品にも色としての効果がある。
→ キャリーオーバーとならなず、表示が必要です。
3 発色剤を使用したハムをポテトサラダに入れた場合、ハムはそのまま原型を止めている。
→ キャリーオーバーとならなず、表示が必要です。
☆ バラ売り食品への表示
店頭でバラ売りをする食品については、食品衛生法上の表示の義務がありません※。
※ かんきつ類やバナナに防かび剤として使用されるイマザリル、オルトフェニルフェノール、ジフェニル及びチアベンダゾールと、甘味料のサッカリン及びサッカリンナトリウムについては、バラ売りであっても売り場に表示をしなければなりません。